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K-EUSOシュミット光学系

K-EUSOミッションは衛星軌道から超高エネルギー宇宙線(UHECR)を本格的に観測する初めてのミッションとなる予定で、天球の全方向から飛来する超高エネルギー宇宙線に対してエネルギースペクトル、到来方向分布を測定します。最初はロシアでKLYPVEミッションとして提案され、発展してK(LYPVE)-EUSOミッションとなりました。 K-EUSOでは光学系に理研で開発したレンズを用いることで視野が飛躍的に大きくなり、超高エネルギー宇宙線の観測数が多くなります。K-EUSOは国際宇宙ステーションのMRM-1ロシアモジュールにとりつけられ2 × 1019 eV 以上の宇宙線をピエール・オージェ観測所の4倍の露出で観測します。ミッション寿命は3年で、国際宇宙ステーションの運用期間が2028年まで延長されればその後も観測を続ける予定です。K-EUSOでは紫外線光が時間的、空間的に描く直線状の軌跡から宇宙線空気シャワーのエネルギー、到来方向などの情報を再構成します。

衛星軌道上の観測装置ならではのK-EUSOの主要観測目的は以下の3点になります。

  1. 初めて超高エネルギー宇宙線を全天球に対して観測することができます。現在、北半球のテレスコープアレイ実験と南半球のピエール・オージェ観測所で観測された最高エネルギー端での宇宙線フラックス(頻度)が異なっていますが、観測装置の違いによる系統誤差が原因である可能性があります。観測誤差ではなく本当に南北半球で宇宙線スペクトルが異なるのかどうかを単一の検出器K-EUSOを使って検証することができます。
  2. テレスコープアレイ実験(TA)が報告したホットスポット構造(おおぐま座の方向からより多くの宇宙線が飛来している)の存否を独立して検証します。独立して観測することにより、1年後にはTAホットスポットは 3σ レベルで検証できると予想されます。ピエール・オージェ観測所グループが報告している「ウォームスポット」が存在すればK-EUSOで独立に検出できると予想されます。
  3. 超高エネルギー宇宙線(UHECR)の到来方向異方性を様々な角度スケールで研究します。例えば近傍の銀河大規模構造 (40度)との相関、天の川銀河の構造と関連する相関、双極子タイプの異方性などがあります。
国際宇宙ステーションのロシアモジュールMRM-1でのK-EUSOの設置予定場所
参考文献
  1. P. Klimov and Lomonosov-UHECR/TLE Collaboration, “Status of the KLYPVE-EUSO detectorfor EECR study on board the ISS”, Proceedings of Science (ICRC2017), no. 412, 2017.