EUSO-SPB(EUSOスーパープレッシャー気球)は長時間観測のためにスーパープレッシャー 気球を用いた実験です。EUSO-SPBは2017年4月24日22時50分(協定世界時)にニュージーランド、ワナカにあるNASAの気球打ち上げ施設から放球され、5月7日に南太平洋に着水しま
した。現在データ解析を進めています。
観測装置は最初のEUSO-Balloonペイロードを改良して作られました。EUSO-Balloonと同様 にオリジナルJEM-EUSO用PDM(光検出モジュール、Photo-Detector Module)が採用され、1m角のフレネルレンズ光学系により視野±6度を達成しています。トリガーは高エネルギー宇宙線イベントが取得できるように改良されました。観測装置は日米欧で分担して製作し、アメリカのColorado School of Minesにおいて組み立てられました。その後、アメリカ ユタ州にあるEUSO-TAサイトで野外試験と較正を行いニュージーランド、ワナカの気球打ち上げ施設へと輸送されました。並行して理研ではデータ収集システム、科学データと工学データ、ペイロードの動作状況をリアルタイムにモニターするシステムを開発しました。
日本の理研、ヨーロッパ、アメリカの3箇所の地上ステーションからNASAを経由して気球と通信し、観測機器は24時間体制でコントロールされました。気球は12日間に渡って飛翔し、2017年5月7日に気球のリークのため実験を終了しました。詳細な原因はNASAが調査しています。フライト中、検出器は正常に動作していたことが確認されています。回収されたデータの解析を進めており、超高エネルギー宇宙線による空気シャワー、流星、超高層雷発光(TLE)、ストレンジクォーク物質などからの紫外線パルスの探索を行っています。
大気光や生物蛍光のようにゆっくりと変化する紫外線光が海洋上でとらえられていないかどうかも解析を行っています。
第2回のスーパープレッシャー気球実験「EUSO-SPB2」は2023年の打ち上げを予定しています。新しい観測装置でさらに長時間のフライトを行うことでより多くの科学データが得られると期待できます。