EUSO-Balloonはフランス宇宙機関CNESと共同で行われた気球実験です。望遠鏡はオリジナルJEM-EUSO用のPDM(2304画素の光検出モジュール)、2枚の1m角フレネルレンズを用いた光学系からなり12度の視野を持ちます。視野中の雲を撮影するためにメインの望遠鏡の他に単独で動作する防水赤外線カメラを搭載しました。
2014年8月25日、月のない夜に望遠鏡はゴンドラに取り付けられ成層圏気球により高度38kmまで上昇し5時間のレベルフライトを行った後に地上に降下させました。このフライトはフランス宇宙機関CNESによりカナダ、オンタリオ州にあるTimmins気球基地において実施されました [文献1]。データ収集用電子回路は1989年から1998年の間に宇宙線中の反粒子探索のために打ち上げられた気球実験(TS93, Caprice-94, 98…)での経験を元に製作されました。
EUSO-Balloonの全ての構成要素はフライト中、設計したとおりに動作し、JEM-EUSOの基幹技術を用いた装置が望遠鏡として総合的に機能することを実証しました。
カナダ北部の様々な地表物の上空で、また様々な大気条件下での紫外線夜光マップが時間分解能2.5マイクロ秒から1秒、空間分解能1kmで初めて取得しました。 紫外線LEDやキセノンフラシュランプを用いた較正光源からの光や、2時間に渡って気球の下を飛行したNASAのヘリコプターから射出されたレーザー光の軌跡を観測することでEUSO-Balloon望遠鏡が宇宙線空気シャワーからの光を充分に検出できる能力があることがわかりました.
参考文献
- J. H., et al. The EUSO-Balloon pathnder. Experimental Astronomy, 40:281{299, November 2015. doi: 10.1007/s10686-015-9467-9.